2021年春から試験的に運用しているMAMORIOチャットサポート。このチャットサービスの主な担当者は、MAMORIO開発責任者の高野が務めています。チャットサポートをきっかけに、お客様が紛失したMAMORIOを探す旅に出たことも。「なくす、をなくす。」を支える、簡単にはマネできないサポートのあり方とは?
雑談OK、開発責任者が直接対応――リアルタイムのチャットサポートを始めました
――MAMORIOチャットサポートについて教えてください。
2021年5月から試験的に、リアルタイムで対応するチャットサポートを始めました。
MAMORIOのオフィシャルサイト右下にあるボタンを押すと、MAMORIO担当者に質問や意見を伝えることができます。
こうしたWeb接客ツールは近年多くのECサイトで導入されていますが、その多くはシナリオをベースにした自動対応を採用しています。一方、MAMORIOのチャットサポートは開発責任者である私に直接つながります。ですから、チャット内容は商品の問い合わせから雑談まで何でもOKです。
――なぜチャットサポートを始めたのでしょうか?
チャットサポートを始めたきっかけは、MAMORIOが生み出せる価値について改めて考えたことです。MAMORIOは落とし物を防ぐ総合カンパニーであり、「なくすを、なくす。」をミッションに掲げています。
現在販売中の諸製品をアップデートしていくことももちろん重要ですが、製品のスペックの向上だけで紛失をなくす仕組みを作れるかといえば、難しいでしょう。そこで思い至ったのが、お客さまの課題を聞き、すぐに対応できる仕組みづくりです。
あらゆる意見を広く受け付け、経営に近い役職のメンバーがチャットに対応するアイデアは、韓国の企業の取り組みから学びました。事業に影響力のあるメンバーがユーザーと積極的にコミュニケーションを取っていくことが、競合他社との差別化につながるという狙いに共感しました。
――約1ヶ月運用してみて、どんなメッセージが来ましたか?
一例を挙げると、MAMORIOの位置を確認するためのアプリに表示される最終位置について質問や意見が寄せられています。
アプリには地図の他にレベルメーター(MAMORIOとの距離をメーターで表示し、MAMORIOが動作しているか、近くにあるかを確認できる機能)が表示されるので、最終位置情報の重要性は低いと考えていたんです。
ところが、ユーザー視点では地図の位置情報のほうが見やすいのだとわかり、位置情報のリアルタイム同期の精度を高めることにしました。
これはほんの一例ですが、チャットからいただいたアイデアを取り入れながら、開発内容を見直しています。
また、Apple社の新製品であるAir Tagとの差について質問が来たこともあります。あとは商品の選択肢が多くてどれを選べばいいかわからない、という相談も……。ジャンルを問わず対話できる窓口を設けたからこそ、たくさんのご意見から気付きや学びを得ています。
――このようなチャットサポートは一般的なのでしょうか?
いいえ、あまり見かけませんね。とくに紛失物防止タグを発売している企業の中では、今のところMAMORIOだけだと思います。
チャットサポートから始まったMAMORIO探しの旅
――印象的な問い合わせについて教えてください。
5月末ごろ、チャットサポートに「MAMORIOが手元から離れたときに通知が来なかった」という苦情が寄せられました。しかも、そのMAMORIOは職場から配られたMAMORIOだったそうで、なくすことがお客様の信頼を損なうことにつながる、重要なMAMORIOだったみたいなんです。そのため、メッセージからも焦りや不安が感じられました。
開発責任者として、一番役立つべきときにMAMORIOが機能しなかったことに申し訳なさを感じました。なんとか見つかるよう、できる限りの手を尽くそうと返信しました。
――具体的にどんなやりとりをしたのでしょうか?
まず、お客様に「なくした心当たりのある場所は?」、「落としたものの形状や特徴は?」といった質問を重ね、落としたMAMORIOを見つけるための事前情報をまとめました。
今回のお客様は車で広範囲を移動する方で、なおかつ何もつけていないMAMORIO本体を落としてしまったそうです。通勤ルートから場所を特定したり、誰かが拾って届けてくれることを待ったりすることが難しいケースということがわかりました。
――なかなかハードルが高いケースですね。
はい。緊急事態フラグというものを立てて、お客様のMAMORIOが発見された通知がすべて私に直接届くシステムに切り替えました。MAMORIOはユーザー同士がすれ違うことで互いのMAMORIOを検知するシステムで場所を特定します。すれ違ったことを報せる通知は、通常なくしたMAMORIOユーザー本人にのみ通知されますが、こうした緊急事態のときは私たちも同様の通知を受け取ることが可能です。
問い合わせがあった約2時間後、お客様のMAMORIOとすれ違ったという通知が私のもとに届きました。その後何度か届いた通知もほとんど場所が動かなかったので、置き去りか、店舗で預かられたか……と推測しましたね。
――通知によって場所だけでなく、状況まである程度想定できるんですね。
はい。そうすると次の対応も導き出せます。今回は通知が来た場所の近隣にある店舗に電話をかけ、MAMORIOが届いていないか確認しました。
しかし残念ながら店舗には届いていないことがわかったので、道路などに落ちている可能性も出てきました。この時点で夜だったため屋外の捜索は困難と判断し、翌朝、実際そのエリアを探しに行くことにしました。
――自分の足で探しに? 近所だったんですか?
いえ、片道1時間半くらいかけて行きました(笑)。
――捜索はどのように進めましたか?
地道に通知があった付近をしらみつぶしに探すしかありません。今回は郊外の幹線道路沿いのエリアだったので、捜索はだいぶ手こずりました。中古車販売店の近くで通知が来ていたので、お客さんみたいな顔をして様子をうかがってみたりして。「MAMORIOを探していまして」と店員さんに声をかけるのって、なかなか難しいですよね。私がここに探しに来た理由も説明すれば長くなりますし。声をかけるか迷ったものの、結局店舗内をぐるりと目視で捜索して、店を出ました。
その後も道路を確認したり、近隣の店舗に立ち寄ったりしながら、MAMORIOの通知が再び入る場所を探しました。
それでもなかなか見つからず、昼食を取ろうと入った飲食店で注文してしばらくした頃、再び通知が来ました。そこで、店員さんに店にMAMORIOが届いていないか質問しましたが、届いていないとのこと。昼食をとりながら、この店の近くにお客様のMAMORIOがある、という希望が増してきました。
昼食を食べ終わったあと、さっそく通知があった場所で、「カメラで探す」機能(MAMORIOがある場所にカメラをかざすとARで円が表示される機能)をオンにして探しました。
近距離にあることさえわかっていれば、方向をつかんで位置を特定することができます。AR機能を頼りに場所を絞っていき、ようやく道路に落ちているお客様のMAMORIOを発見しました。
――最後の決め手はAR機能だったんですね。
通知が来れば7~8割見つかったと言っても過言ではないのですが、ここから正確な場所までたどりつくにはAR機能が便利です。
とくに、今回のように屋外で落とした場合、音を鳴らす機能だと遠距離からは聞こえづらい場合があります。今回も風が強い日だったので、よっぽど大音量でなければ音声の通知では特定が難しかったと思います。それに、幹線道路沿いの屋外は車の音も大きいものです。
こういった騒音が多い場所では、ほとんど音を鳴らす機能は役に立ちません。一方AR機能は視覚的にMAMORIOの方向と距離がわかるので、今回のような屋外捜索に役立ちます。
――お客様にMAMORIOを渡したときの反応はどうでしたか?
ホッとしていらっしゃいましたね。今回もしもすぐ捜索しなければ、休日中ずっとお客様の不安が続いていたと思うので、安心していただけて良かったです。
MAMORIOは“落とし物の総合カンパニー”。最強のサポートで「なくすを、なくす。」
――チャットサポートについて、今後の展望を教えてください。
今回のようなサポートを含め、チャットサポートの知見を重ねることで、「モノが見つかる」、「モノをなくさない」体験をユーザーの皆様に届けられればと思います。より充実したチャットサポート対応ができるよう、社内体制を整えていく予定です。
――サポートの充実という点で、とくに重視したいポイントは?
最重視しているのは対応スピードです。モノをなくさないことが一番理想的ですが、なくしてしまった場合は、いかに早く適切な対応を取るかが紛失物回収の確度を高めます。ですから、MAMORIOのチャットサポートのKPIは初動時間のスピードにしています。
また、MAMORIOユーザーの皆さんが「なくしたかも」と気づいてお困りのときは、ぜひすぐにチャットサポートにお問い合わせいただきたいです。迷わずお問い合わせいただくことで、初動の時間が早まり、落としたモノが見つかりやすくなります。
――最後に、読者にメッセージをお願いします。
MAMORIOは落とし物総合カンパニーとして、あらゆる観点から「なくすを、なくす。」に取り組んでいます。紛失物防止タグMAMORIOはあくまで手段の一つであり、今回試験的に導入しているサポートも、落とし物を防いだり、落としたモノを見つけたりするためのソリューションの一つだと考えています。
今回の記事を読んでチャットサポートに興味を持った方は、ぜひ気軽に右下のボタンからお問い合わせください。皆さんとお話できることを楽しみにしています。