最近、犬や猫などの迷子のペットを探しているというSNSの投稿や、見つけた動物を保護した旨の投稿が拡散されているのを目にします。
飼い主のもとに戻れることを願うしかありませんが、一度迷子になってしまった動物を探すのは、なくしたモノを見つけるよりもずっと大変なことです。
今回は、警察の担当者に取材してわかった迷子ペットの保護状況とともに、大切な家族であるペットの迷子を予防する方法をご紹介します。
目次
年間8万匹以上の犬や猫などのペットが迷子に その後、あの子たちは……
2018年、動物愛護団体による犬猫の引き取り数は約10万匹を数えました。飼い主から直接引き取った数を差し引いても、8万匹以上になります。犬猫以外の動物を加えれば、さらに多くのペットが年間で迷子になっているでしょう。
迷子になった膨大な数のペットたちは、その後どうなるのでしょうか?
犬や猫などの迷子ペットは「遺失物」 発見者から警察署・施設へと移動
じつは迷子のペットは、法的には忘れ物などと同じ「遺失物」。
発見者は警察署に「拾得物届」を出すことが義務付けられています。届け出があった動物たちはその後、届け出た人が引き取りを希望しない場合には警察から各都道府県の動物愛護センターに移されることになります。
「犬・猫」の場合は例外的に、警察署のほか動物愛護センターに直接届け出ることも可能です。ただし、犬・猫「以外」の動物については原則どおり、届け出先は警察のみ。その後、警察から専門的な対処のできる施設へ預けられます。
発見者から警察署、そして施設へ。全く知らない人に会い、場所を転々と移動することで、動物たちはナーバスになってしまいます。
犬や猫などの迷子ペットの保護期間にはリミットが……
多くの迷子ペットは警察から適切な対応が可能な施設へ移されますが、場合によってはすぐに専門施設で預かることが難しいケースもあります。
そんなときは、イレギュラーな対応ながら警察が一時的に迷子ペットを預かることも。
今回、迷子のペットの対応について教えてくださった警察署の担当者も、一度ウサギを預かった経験があるのだとか。「ウサギって意外と元気な動物なんです……私が偶然ウサギを飼った経験があるから対応できましたが、通常業務もあるので……」と、当時の苦労を振り返ります。迷子になったストレスで興奮した犬に噛まれたこともあると教えてくれました。
相手は生き物。ご飯も食べれば、排泄だってします。一時的な預かりであってもスペースの確保が必要になりますし、場合によっては散歩や特殊なケアが必要な場合もあります。
保護にかかる場所や費用、人的リソースには限りがあるため、迷子ペットを預かることのできる期間にも限界が生じることになります。
迷子になった猫・犬の飼い主が見つからなければ最終的な対応はひとつ
都道府県ごとに施設での迷子ペット預かり期間には差があるものの、飼い主や引き取り手の見つからなかった迷子ペットは1週間程度で保健所に移され、殺処分になるケースがほとんどです。
訓練を積んで救助犬として活躍する犬や、飼い主以外に引き取り手があらわれるケースもありますが、こういった救済措置には限りがあります。
殺処分数は年々減少していますが、犬猫に限っても年間約4万匹が犠牲になっています。こんな現状を食い止めるためにも、大切な家族である動物たちの迷子ケアを徹底することが大切ですね。
犬や猫などのペットの迷子を予防する3つの手段を比較
では、ペットの迷子対策としてどんな方法があるのでしょうか? 代表的な方法をご紹介するとともに、それぞれのメリット・デメリットを確認します。
犬・猫ペット用の迷子札:低コストでお手軽だけど、効果のほどは?
ワンちゃんや猫ちゃんの首輪などに飼い主の連絡先やペットの名前を記載する迷子札は、もっとも手軽な迷子対策です。首輪に直接プレートを打ち込むタイプのものや、キーホルダー型のものなどがあります。
比較的安価であることから多くの動物たちが迷子札をつけており、警察や動物愛護センターでも迷子札の利用が推奨されていますが、迷子になった状況によっては首輪が外れてしまうケースや、汚れて情報が読めなくなってしまうケースも。
また、個人情報を動物につけておくことにリスクを感じる人が、迷子になる可能性の高い外出のタイミングで首輪を外してしまうこともあるのだとか。「もしも」の時に備えるという点では、若干のリスクがあるということは注意しましょう。
マイクロチップ埋め込み:読み取り専用リーダーの普及が進まず
マイクロチップの埋め込みは、近年普及しつつある最新の迷子対策です。一部の国では動物へのマイクロチップの埋め込みが義務化されているほど普及が進んでいます。
直径2㎜程度の小さな筒型のチップを動物に埋め込むことで、チップ内に付与されたIDと、事前に登録した飼い主のデータを照合することができます。
マイクロチップは動物病院で装着することができ、費用は5,000円程度です。埋め込み後は特にケアの必要もなく、動物の健康にも影響がないため、デメリットはほとんどありません。
ただし、迷子になった場合にデータを照合するためには、マイクロチップを埋め込むだけでなく、データベースに情報を登録しておく必要があります。登録にも別途費用(1,000円)がかかるため、マイクロチップを埋め込んでも情報を登録せず放置してしまう飼い主さんもいるそうです。
さらに、日本での認知度はまだ低いのが現状。マイクロチップを埋め込んでも、読み取りの専用リーダーがなければチップ内の情報を読み取ることはできず、全国的な普及は進んでいません。
マイクロチップ利用を推奨する警察署や自治体はいたるところにありますが、万全の対策になるにはもう少し時間を要するでしょう。
紛失防止タグ・MAMORIO︰ペットの居場所をスマホから確認可能、最先端の犬や猫ちゃんの迷子札として
紛失物防止タグMAMORIOは、犬や猫などの動物の迷子対策の観点でも利用できます。迷子札よりコストはかかりますが、マイクロチップ装着に比べて安価での利用が可能です。
迷子札やマイクロチップともっとも違うポイントは、「飼い主自らが探せる」ということ。あちこち動き回るペットがどのエリアにいるのか把握できれば、迷子のペットを見つけるための大きな手掛かりとなるでしょう。
また、「つないでいたペットが目を離した隙にいなくなる」という、ペットが迷子になる典型的なシチュエーションでも、MAMORIOアプリを通じて「MAMORIOが手元から離れた」という通知が来るため、大切なペットが迷子になることを防止できます。
ちなみに上の画像のような、MAMORIOを首輪につけることのできるケースも発売されています。
愛するペットの「もしも」の時のために今できることを
今回は、迷子のペットについて、保護の現状と迷子対策をご紹介しました。大切な家族の一員だからこそ、もしもの時に備えてしっかりと準備してあげたいですね。
最後に、ご紹介したペットの迷子対策の特徴を表にまとめてみました。
迷子札 | マイクロチップ | MAMORIO | |
価格 | <1,000円~ | 手術費:3,000円~5,000円
登録料:1,000円 |
2,480円 |
手順 | ・装着 | ・手術
・データ登録 ・迷子時のデータ読取 |
・装着
・アプリ登録 |
個人情報漏洩リスク | △ | ◎ | ◎ |
損壊リスク | △ | 〇 | △ |
自分で探せる機能性 | × | × | ◎ |
ご紹介した内容にもそれぞれメリット・デメリットがあるので、ご自身のペットに適しているものを選んでみてください。
「もしも」の備えは後々に回ってしまいがちですが、家族の一員であるペットだからこそ、今すぐにできることから始めてみましょう。