「高額の現金が入った財布は、落としても戻ってくる可能性が高い」という海外の研究成果を見つけたMAMORIOラボ研究員。ところが、その実験には日本のデータが含まれていない! そこで、日本ではどうなるのか実験してみることに。お金を入れた財布を自ら落とすハイリスクローリターンな実験から見えてきた、意外な真実とは!?
落とした財布の中身が高額なほど、持ち主に返ってくる……だと?
みなさん、財布を落としたことはありますか?
筆者の宿木は過去に5回財布を落として、うち3回は戻って来ず、戻ってきた2回とも中身は空っぽでした。まぁ、落とし物の中でも、財布は返ってくる可能性が特に低そうなイメージですよね。
海外では、落とした財布の中身で返ってくる確率が変わる!?
そんな財布の落とし物について、ある興味深いデータが見つかりました。
「財布の中身が高額であればあるほど、その財布は無事に返ってくる」というのです。
チューリッヒ大学の経済学者によって行われた当該実験は、世界各国で総数1万7千個の財布を落とし、公共施設の係員に意図的に届け出るという内容。つまり、届けられた財布を公共施設の職員が盗むかどうかを観察したワケです。
実験には半透明で中身の見えるケースを用い、現金のほか、連絡先や鍵など数パターンのものを入れたそう。その結果、中に入っている現金が高額であればあるほど、財布が拾われた旨の連絡が来たのです! 鍵も一緒に入っていると、財布が返ってくる確率はさらに高くなったとか。
実験したChristian Lukas Zünd氏によれば、財布の中身が高額なほど「盗んだ」という感覚が強くなり、その状態への嫌悪感が働くことが今回のような結果をもたらすのではとのこと。
国別比較ではスイスやノルウェーの返却率が高く、中国、マレーシアなどのアジア圏は少なめでした。
(参考:Researchers 'Lost' 17,000 Wallets in Hundreds of Cities to See What People Would Actually Return)
落とし物実験を日本でもしたい!! しかし……
この実験、日本は残念ながら対象外。そこで、当MAMORIOラボは「日本でやったらどうなるんだろう?」と実験の計画を立ててみました。が……、財布1万7千個に入れるお金を計算して即座に断念しました。
というか、これよく考えてみたら日本だと警察に届きますよね。ただでさえ遺失物の対応で忙しい警察の苦労を増やすことにつながりかねない……!
ということで、今回は日本版にアレンジした実験を行うことにしました。
実験場所は、人通りが多い、そしてMAMORIO社から近いという条件を満たす上野公園。
落とす財布はMAMORIOラボ研究員・西田の私物にしました。
この財布にさまざまな中身を入れて落とし、拾った人の反応をモニタリングします! さらに、交番に届けられる前にMAMORIOラボ研究員がヒアリングできるよう、落とした場所をしっかりチェック。
財布の中身として用意したのは以下。
中身1:1万円札と5千円札
金額によって返ってくる確率は違うのか確かめるために、1万円札と5千円札を準備。
中身2:紛失防止タグ「MAMORIO」
いざという時のために紛失防止タグ「MAMORIO」も準備。財布を見失ったらシャレにならないので。
中身3:かわいい甥っ子の写真
ある調査によると、ペットや子どもの写真が入っている財布は落としても返ってきやすいらしい。今回は研究員・宿木の甥っ子(1歳)の写真でチャレンジ。
(参考:How to get your lost wallet back... make sure there's a picture of a baby inside | Mail Online)
中身4:ラーメン屋のショップカード
普通、お札以外にもなんか入ってるよね? ということで私物のカードを。西田が異常な数のラーメン屋のショップカードを持ち歩いていることが発覚。
中身5:西田の名刺=持ち主の連絡先
財布を拾ってくれた人が正直者なら、名刺を見て連絡をくれるだろうということで。連絡してくれる人は何人いるのだろうか……?
落とし物防止|紛失防止タグMAMORIO
手元から離れると、いつどこで失くしたかをお知らせ。スマートフォンで、大切なものを見守れます。
お財布、鍵、バッグなど、大切なものに付けておくと、置き忘れたり、見失ってしまった時も安心です。
財布の落し物実験、日本verがスタート!
さて、さっそく財布を落としてみます。実験とは言えお金の入った財布を手放すのは緊張します。
ケース①「お金を抜いてないか、ちゃんと確認してください」
まずは「1万円、かわいい甥っ子の写真、ラーメン屋のカード、西田の名刺」入りの財布でチャレンジ。場所は上野公園の中央広場です。
落としてから6分ほど経った頃、待ち合わせで立ち止まった女性が財布を発見。ちらりと中身を見るものの、すぐに財布を持って交番方向へ……。
急いで落とした本人であることを伝え、声をかけました。
拾ってくれたのは、40代くらいの中国圏の女性。にこやかに財布を返してくれます。
「良かった、そこに落ちていたので今から交番に届けようと思っていました。あ、中身を抜いていないかどうかちゃんと確認してください」
事件に対するリスクヘッジの精神があることにやや驚きます。話を聞くと、中身の確認などするまでもなく、すぐに交番に届けることを選んでくれたようす。「そりゃあなくした方が困るから、届けて当たり前ですよ」と笑われました。
ご協力ありがとうございます! こんな人が世界にあふれていたら、財布を落としても全部戻ってくるのでは、と心から思いました。
ケース② 拾った財布を持って、問答無用で交番に直行
次は「5千円、ラーメン屋のカード、西田の名刺」を財布にIN。先ほどは交番のすぐ近くだったので、今回は少し離れた公園内の散歩道にポトリと落としました。
すると2分ほどで、歩いていた男性が財布を拾い上げ、全く中身を見ずスーッと駅のほうへ歩いていきます。落とした本人であることを伝え、声をかけると「そこで見つけたんですよ!良かった」と手渡してくれました。
駅のほうへ向かっていたのは50代前後の男性。駅そばに交番があるのを知っていたからだそう。たしかに、駅の近くに交番があります。
ちなみに、中身を確認しなかったことについては「いやあ、とにかく届けることしか……」とのことでした。すぐに見つけてくれて、ありがとうございました。
あれ? 財布の中身って、意外に関係ない?
何回か財布を落として拾ってもらって、を繰り返しましたが、財布の中身をしっかり確認する人はゼロ。落とし物を交番に届ける習慣があり、なおかつ交番が比較的どのエリアにもある日本では、財布の中身による行動の変化は起こりづらいのかもしれません。
そう考えてみると、落とし物を届ける場所にMAMORIO Spot(※1)があれば、MAMORIO付きの財布はほぼ確実に場所の位置を突き止めることができます。中身が変わらない状態で財布を取り戻すことも、夢ではないのかもしれません。
「いやあ~中身を抜かれる心配なんてしなくて良かったのかもね★」と気を抜いたところ起こってしまったのです……実験ではなく事件が。
※1:「MAMORIO Spot」とは、駅や商業施設の忘れ物センターなどで導入が進む、忘れ物検知システム。コンセント1つで導入可能。MAMORIOを装着した落とし物を検知し、MAMORIOアプリを通じて持ち主に検知した場所を通知する。すでにJR東日本の51駅などで導入が始まっている。
帰路の秋葉原で、とんでもないことが起こった
実験を終えたMAMORIOラボ研究員の宿木と西田。本日の実験結果をどう記事化したものか検討しながら秋葉原の駅前を歩いていたところ、西田のiPhoneに不穏な通知が。
MAMORIOアプリ「財布は手元にありますか?」
西田「ん? そういえばジーンズのお尻のポケットが妙に軽い……」
本当に財布を落としてしまった!!
慌てて「みんなで探す」モード(※2)に切り替えると、さすが電脳都市アキハバラ、まもなく「あなたのMAMORIOを見つけました」と通知が来ました。
急いで通知されたポイントへ。すると雑踏の向こうに、一瞬だけ西田の財布を持ち歩く女性の姿が!?
西田「あれ、オレの財布だよね!!」
アン・ハサウェイに似た横顔の女性が一瞬だけ確認できたものの、人通りが多い交差点でちょうど赤信号につかまってしまいます。後ろ姿は消えてしまいました……。
追ってみたものの彼女の姿は見当たらず、しばらくMAMORIOの通知を見ながらやきもきするMAMORIOラボ研究員。「ああ、本当に落としたときってこういう気持ちなんだよね」とがっくり肩を落とします。
自然に財布を落とすために、あえてポケットの浅い所に財布を入れる、なんて小細工をしていたことが間違いだった……。反省すること1時間、再びMAMORIOに通知が来ました。
西田「秋葉原にまだあるー!!」
すぐに通知ポイントを訪ねてみたところ、そこは交番。どうやら、あの女性は財布を届けてくれたようです。「不注意で落としてしまってごめんなさい」と警察官の皆さんに平謝りしながら、書類を一通り書いて財布を無事受け取りました。
西田「いやあ、最後の最後でビビったけど、届けてくれた人がいい人で良かっ……」
財布の中身の1万円は、ありませんでした。
※2:「みんなで探す」機能とは、MAMORIOのユーザーネットワークで、紛失したMAMORIOをさがすことができる機能。MAMORIOアプリで「みんなで探す」をONにすることで、サーバーに当該MAMORIOが紛失状態であることを登録。他のMAMORIOユーザーが紛失中のMAMORIOに近づいた時に、紛失したMAMORIOの位置情報が落とし主のアプリに届く。
MAMORIOラボ編集部緊急会議
ということで、実験をした西田と宿木、MAMORIOオフィスにいた研究員で緊急会議(という名の筆者・宿木の悲しみ発散会)を実施しました。
宿木:
ショックです!! まさか……まさか現金を持っていかれるとは……(涙)私見たんですよ! アン・ハサウェイ似の女性だったんです!!
西田:
あの人が盗んだって決まってるわけじゃないし、落としたのは俺らだから落ち着いて
社員A:
警察に届け出た謝礼金を辞退する代わりに、財布の中身を一部抜く人もいるみたいですね。諸々の手続きを簡略化するという意味合いで
宿木:
でも、今回は一部じゃなくて1万円マルっとですよ……
社員A:
それは1枚しか入ってなかったからでは……(笑)これが千円札10枚なら違ったかもしれませんね
西田:
お金を抜いたあとの財布がトイレで見つかるなんて話もあるから、交番に届いていただけ良かったかもしれない
宿木:
うう……結局かわいい甥っ子の写真も高額な現金も関係ないんだ……
社員B:
まあまあ。中身は残念だったかもしれないけれど、財布が戻ってきたことが重要だから
西田:
確かに。MAMORIOをつけていなかったら、警察に届いていることもわかりませんでしたし
社員B:
今回は実験用と割り切っていた財布だけれど、人によっては思い出の詰まった財布かもしれない。お金はまた稼げばいいけど、財布は唯一のモノだもんね
とはいえ、財布を持っていった女性を目撃しているだけに、やっぱり納得行かない……
結論:中身はさておき、MAMORIOをつけていれば財布は返ってくるかも
今回の日本版「財布の中身で落とし物が戻ってくる確率は上がるのか?」実験でわかったことをまとめました。
- 財布の中身と戻ってくる確率は、日本ではあんまり関係がないみたい
- 財布が落ちていたら、だいたいの人が交番や落とし物センターに届ける
- 落ちていた財布の中身を抜き取ってから、わざわざ交番や落とし物センターに届ける人もいる
- たとえ財布の中身は抜かれても、財布自体はMAMORIOが見つけてくれるかも
落とし物を交番や落とし物センターに届ける習慣が根付いている日本では、今回の実験でも、多くの人が財布を届けようとしてくれていました。
山手線をはじめ、MAMORIO Spotを設置している落とし物センターも増えつつあるので、MAMORIOを入れておけばスムーズに財布を取り戻せる可能性もあるんじゃないでしょうか。
ただし、財布の中身については別問題なので、ご注意を!
皆さんの大切な財布が無事に手元にあり続けることを、MAMORIOラボ研究員一同願っております。