研究レポート

忘れ物にはドラマがある。電車の忘れ物が行き着く先「鉄道忘れ物市」の魅力を調査してみた

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誰かの忘れ物を買えるという、ちょっと不思議な買い物体験ができる「鉄道忘れ物市」。販売されているのはすべて、電車内や駅で発見された忘れ物(落し物)です。一体どんな仕組みで成り立っているのか、気になるその裏側をこの道20年の専門業者や“鉄道忘れ物市マニア”の方に聞いてみました!

電車や駅の落し物が“買える忘れ物”になるまで

みなさんは、電車の中で忘れ物(落し物)をしたことありますか?

筆者の文(ふみ)は以前、酔っ払って傘を忘れた経験があります。その日は土砂降りだったこともあり、「もう誰かに盗られているかもしれない……」と思い、駅に問い合わせをせずにビニール傘を買って帰りました。

私のように、忘れ物をしても最初から戻ってこないとあきらめてしまう人や、そもそも忘れた(落とした)ことに気づかない人もいるため、鉄道会社には落とし主が不明な忘れ物が数え切れないほど眠っているといいます。

帰る場所を失った忘れ物たちが、どのようにして“買える忘れ物”になるのか。気になるその裏側をMAMORIOラボ研究員が調査しました!

「鉄道忘れ物掘り出し市」に潜入して聞いてみた

小田急相模原駅にある有限会社ラ・ボーテの事務所  画像提供:鉄道忘れ物市

鉄道忘れ物市について調査すべくお話を聞いたのは、有限会社ラ・ボーテの上田さん。約20年に渡り、全国のショッピングモールや催事場などで「鉄道忘れ物掘り出し市」を開催しています。その数なんと、年間180会場!

お話を伺った取材時も、東京・葛西にあるショッピングモール「アリオ葛西」にて「鉄道忘れ物掘り出し市」が開催中でした。

「これがいいかな〜?」と、どのぬいぐるみを買うか悩んでいた親子の姿も

会場に潜入してみると、そこには大量の忘れ物が!

傘に杖、洋服や靴、老眼鏡、キーホルダー、水筒など、ありとあらゆる品物が並びます。これらすべてが落とし主に迎えにきてもらえなかった忘れ物たちだと思うと、なんだか切ない気持ちになりますね……。

上田さんのように、電車や駅の忘れ物の販売業を営む会社は複数あるそうで、「鉄道忘れ物掘り出し市」という名称も、運営する会社によって、さまざまなのだとか。

「電車や駅で発見された忘れ物は、各鉄道会社で定められた期間、落とし主が判明するまで保管されます。その期限を過ぎてしまった忘れ物が、私たちのような専門業者向けに“競売”にかけられ、一番高値をつけた業者が買い取れる仕組みです」

JR各線や京王線、ゆりかもめなど、複数の鉄道会社の競売に出入りしている上田さんによると、どの路線もケタ違いに多い忘れ物は傘なのだそう。確かに手すりにかけたまま、うっかり忘れてしまった経験を持つ方も少なくないのでは?

ちなみに、ビニール傘は忘れ物として処理される鉄道会社はなく、発見された場合は処分されるそうです。

実際に、会場には数え切れないほどの傘が……! お値段はなんと1本47円から。花柄やレースなど、幅広いデザインの傘がズラリと並びます。平均価格は500円ほどでした。

販売されている忘れ物はすべてクリーニング済み。傘に限らず、衣類や杖など、一つひとつ点検しながら清潔な状態にしているのだとか。忘れ物なので多少の使用感はありますが、安心して購入することができます。

専門業者に聞いた!「鉄道忘れ物掘り出し市」のお買い得商品

中古品とはいえ、超良心的な価格設定の「鉄道忘れ物掘り出し市」。傘が1本47円など、ここまで激安だと仕入れ価格が気になるところ。

「それはさすがにお答えできませんが、僕がもしお客さんだったら購入したい、お買い得な忘れ物だったら特別にお教えします」と上田さん。おすすめ順にランキング形式でご紹介します。

第3位:スマートフォンやPCの充電・USBコード類

「スマホやPCの充電ケーブルやUSBコードは、折れてしまったり接続不良で使えなくなってしまったりすることが多い消耗品。1本80円から販売しているので、お買い得ですよ。予備のコードを購入しやすい価格なので、何本かまとめて購入するお客さんもいますね」

第2位:イヤホン

「どの会場でも人気が高く、売り場に出すと同時に在庫がどんどんなくなっていくのがイヤホンです。お値段は1本80円から。運が良ければ、最新式のワイヤレスイヤホンを購入できるかもしれません」

アリオ葛西の「鉄道忘れ物掘り出し市」では、最終日には在庫がほとんど残っていなかったので、イヤホンを狙うなら早めに足を運んだ方が良さそうです。

第1位:ブランド傘

「Burberry(バーバリー)やCELINE(セリーヌ)などのブランド傘を、定価の1/3以下で販売しているので、中古品といっても割安だと思います。もし私がお客さんだったら、ブランド品の傘を購入しますね」

ブランド傘の価格は、800円〜1,500円前後。ブランド傘は、作りがしっかりしている上、素材も上質なものが多いので、ブランドに限らず、好みのデザインがあればチェックしてみると良いかもしれません。

ちなみに、出会えたらラッキーなレアなお買い得商品もあるそうで、新品でも1,000円以下で販売している「UNI●LOの洋服」や、「ベビーカー」などが狙い目なのだそう。

実際に会場で販売されているベビーカー 画像提供:鉄道忘れ物市

それにしても「ベビーカーって忘れることあるの?」と思ったのは筆者だけではないはず。

鉄道会社で競売にかけられる忘れ物には、発見された場所と日時が記されたタグがついているそうで、ベビーカーは駅のエレベーター付近や電車内で発見される物が多いとのこと。

「そのタグを見て、落とし主との別れのシーンをいつも想像してしまうんです。ベビーカーはきっと、お母さんがお子さんを抱っこしたまま急いで忘れてしまったのかなと思います」と上田さん。

平成から令和へ。ここ20年で増えた忘れ物とは?

約20年間に渡り、「鉄道忘れ物掘り出し市」を運営している上田さん。平成から令和へ、どのような忘れ物が減って、増えたのか。その変化を伺いました。

【ここ20年で増えた忘れ物】

  • スマートフォン関連(イヤホン、充電コード、モバイルバッテリーなど)
  • 外国人向けのガイドブック

※スマートフォンそのものは個人情報の関係で忘れ物(古物)としては販売できないそうです。

【ここ20年で減った忘れ物】

  • テレフォンカード
  • 漫画本
  • ゲーム機
  • MP3プレイヤー

「平成のはじめの頃は、テレフォンカードの忘れ物が多く、鉄道忘れ物掘り出し市でも人気商品でした。

携帯やスマートフォンの普及が加速してから、漫画本やゲーム機、MP3プレイヤーがどんどん減っていきましたね。一方で、イヤホンや充電コードなど、スマートフォン関連の忘れ物がドッと増えました。

最近は外国人観光客が増えてきたこともあって、英語や中国語などの日本のガイドブックなんかも多いですよ」と上田さん。

忘れ物でわかる、時代の変化。確かに、今は漫画もゲームも音楽も、スマホ1台あれば楽しめますもんね。改めて便利な時代になったものです。

こんな物まで!? 鉄道忘れ物市マニアに聞いたユニークな掘り出し物

アリオ葛西の会場で販売されていた漫画本や小説。チラッと立ち読みできるのも嬉しい

初めて目にする名前のアーティストの限定版CDから、何十年も前に出版された小説まで。大量に並べられた品物の中から、自分がときめくお宝を探すことができる「鉄道忘れ物市」。そんな魅力にハマって全国の鉄道忘れ物市を回る、忘れ物市マニアがいるらしい。

これまで全国30カ所以上の「鉄道忘れ物市」に足を運んだ経験を持つKさん。Twitterで直近の開催情報や、訪れた会場の品揃えをレポートして情報発信を行っています。

鉄道忘れ物市の魅力を知り尽くすKさんに、今までに出会ったユニークな掘り出し物を聞いてみました。

「ユニークというか、落とし主との別れを想像するといたたまれない気持ちになるのが、“薄い本”こと同人誌です」

これは紛れもなく薄い本…… 画像提供:鉄道忘れ物市

「忘れたことに気が付いても、引き取りに行くのが恥ずかしかったのかなと……(笑)価値がわかる人に買ってもらえたら、落とし主の方も本望じゃないかと思います。

同人誌の他にも、アニメやゲームのキャラクターの抱き枕やフィギュア、限定グッズなんかもたまに見かけますね」

確かに、密かに趣味を楽しんでいる人にとっては、落とし主を名乗るのはなかなかハードルが高いものがあるかもしれません。

「今までで一番印象に残っているのは、モデルガンの“火縄銃セット”ですね」

※画像はイメージです

「鉄道忘れ物市ではなく、大阪・桃谷にある鉄道の忘れ物を扱う常設店で見かけました。どうしてこんなインパクトのある物を忘れてしまったのだろうと、色々妄想を膨らませてしまう商品でしたね」

山で狩猟ごっこでもする予定だったのか、あるいはコスプレの小道具だったのか……火縄銃のモデルガンとはなんとも渋いセンスです。

MAMORIOラボ研究員の「これ買いました!」

アリオ葛西で行われた「鉄道忘れ物掘り出し市」の取材後、人生で初めて“忘れ物を買う”体験を実際にしてきました。

以前、酔っ払って傘を電車に忘れたことのある筆者。もしかしたらあの傘も、「鉄道忘れ物市」で売られていたかもしれない。あの時、傘を引き取りにいかなかった罪滅ぼしの気持ちも込めて、誰かが忘れた傘を買うことに決めました。

「Because(ビコーズ)」というブランドの、黒地にハートのレオパード柄にゴールドの持ち手の傘。お値段は800円でした。持ち手がこれだけ目立つデザインなら、電車の手すりにかけても忘れないはず!

実際に訪れた筆者が感じたのは、宝探しのようにワクワクできる買い物体験こそが「鉄道忘れ物市」の魅力だということ。帰る場所を失った物が、新しい主に出会える場所。そう考えると、ちょっと素敵だと思いませんか?

毎週、全国各地で開催されている「鉄道忘れ物市」。思わぬ掘り出し物との出会いを、みなさんもぜひ体験してみてください。

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