ロックバンド「ドラマチックアラスカ」のボーカル、ヒジカタナオトさん。同バンドの作詞作曲を全て手がけ、イベントのプロデュースなど精力的に活動する彼の意外な一面が「忘れっぽいこと」。
紛失防止タグ「MAMORIO」のユーザーでもあるヒジカタナオトさんに、これまで「忘れてきたもの」を聞きました。
「忘れっぽいのはボーカルだから。人より考えてるから、いろんなことを(笑)」
「え、電車降りられへんやん!」年明け早々に財布を紛失
バンド仲間と酒を浴びるほど飲んで迎えた年始、西宮神社に初詣へ。おみくじを引いて「今年もいい年でありますように」なんて願って、電車に揺られて帰るはずでした。
でも、ICカードを財布を取り出そうとすると、ない。ちょっと待って、電車降りられへんやん! 窓口で事情を説明して謝って「今回だけ」と改札を通してもらって……そんな姿に、メンバーからは「またか」と呆れられちゃって。
僕はめちゃめちゃ、忘れっぽいです。他のメンバーもよく忘れ物をしますけれど。僕はその中でも特にモノを落としやすい。移動するたびにマネージャーに持ち物チェックをしてもらうし、特に忘れっぽいものはスペアを準備してもらっているほどです。ギターを弾く邪魔にならないように袖を留めるヘアゴムとか。
ちなみに財布を失くしたのは二度目です。こだわりのデザインで作ったオーダーメイドの財布なので、もう、どうしようかと。
真っ先にやったことが、「MAMORIO」(※1)で探すこと。残念ながら最後の場所は自宅を示していたので、「みんなでさがす」機能(※2)をオンにしました。警察に遺失届を出して、あとは信じて待つしかありませんでしたね。
※1:「MAMORIO」はタグ型のハードから発信した位置情報を、スマホの「MAMORIOアプリ」上で表示する仕組み。モノを落とした場所がユーザーから近いと思われる場合は、まず、Bluetoothを通じてMAMORIOの場所を確認する方法が考えられる。
※2:「みんなで探す」機能とは、MAMORIOのユーザーネットワークで、紛失したMAMORIOをさがすことができる機能。MAMORIOアプリで「みんなで探す」をONにすることで、サーバーに当該MAMORIOが紛失状態であることを登録。他のMAMORIOユーザーが紛失中のMAMORIOに近づいた時などに、紛失したMAMORIOの位置情報がアプリに届く。
「みんなでさがす」機能で財布を発見―今度は僕が見つける番
10日間待って戻ってこなかったら、クレジットカードを止めよう。そう決めて待ちました。もう、心配で心配で。そわそわして、毎朝祈るような気持ちでスマートフォンを開いて、MAMORIOアプリ(※3)をチェックしていましたよ。
メンバーには頭を下げて、「ほんっとごめん、1週間だけ、貸して……」ってお金を借りて……情けないですけど(笑)。
でもね、忘れっぽいのは、ボーカルの職業病でもあるんですよ。
まず、作詞作曲を担当してるし、楽曲の方向性もバンドのコンセプトも僕がまとめるし、ライブのタイムテーブルも、あれも、これも……。同時に考えていることがたくさんあり過ぎ。他のバンドのボーカルも忘れっぽい人が多いと思います……とか言うと怒られるかな(笑)。
もう見つからへんか……とあきらめかけたころ、MAMORIOアプリに通知が! 誰かのMAMORIOが、僕の財布を見つけてくれたんです。
場所は、初詣に行った西宮神社。総合窓口の遺失物センターに届いていて、奇跡的に現金も抜かれず損害はゼロでした。
※3:「MAMORIOアプリ」は、MAMORIOの位置表示や「みんなで探す」機能のオン・オフを管理できる。また、電池切れアラートや買い替えサービス「OTAKIAGE」へのアクセスも可能。
探してもらった感謝の想いが、次の誰かへつながる
西宮神社で僕の財布を届けてくれた人、そしてその財布をMAMORIOで見つけてくれた人に、感謝の気持ちを伝えたいです。「もしも、あなたのMAMORIOがついた大切なモノがなくなったら、今度は僕のMAMORIOで見つけたい」そう思っています。本当にありがとう。
MAMORIOの「みんなでさがす」機能を使って思い出したのは、ゲームのすれ違い通信です。ポケモンとかモンハンとか、僕らの世代は誰かと無意識に通信することを、コンテンツとして受け入れてきた気がします。MAMORIOはその機能を人の役に立つものにしたんだな、すごいなって思いました。
つけておくだけで誰かの役に立つかもしれないって、とても素敵なことですよね。
そういえば、見つかった財布からおみくじが出てきて。それが大吉だったんですよ! 「年始早々財布を落としておいて、大吉ちゃうやろ」って笑って……でも見つかったから、大吉なんかな。わかんないですね、人生って。
「いろいろ抱えこんで、鬱屈した日々。でも今年は少し変われそうな気がしてる」
忘れ物の多い、パッとしない高校時代。唯一の救いが音楽だった
高校生の頃は、必要なものすべてをパンパンになるまでバッグの中に詰め込んで歩いてたんです。重くても、足りないものがあると嫌だから。だから高校生なのに肩こりが酷くて……。
パッとしない高校時代でしたよ。
お昼はずっと一人。iPodで音楽を聴きながら弁当を食べていました。運動部の人たちがうらやましかったです。なんか、楽しそうだなあって。コンプレックスの塊でした。忘れっぽいことに関しても、「どうせ僕は忘れる人間ですね、はい」って思っていました(笑)。
そんな僕が唯一「そんなことできるんだ、すごい」って言われるのが文化祭のステージでした。たった一日だけ褒められるステージで、音楽を伝えて、歌うこと。それが楽しくて、うれしくて、バンドを続けてきました。
だから、僕の音楽は日々の鬱屈とした想いやうまくいかない気持ちがベースにあるんですよね。
年齢、時代の変化……デビューしてからも続いた鬱屈とした日々
デビューしてからも、鬱屈とした日々が続きました。当時20歳。若かったせいで、年齢による息苦しさがあったんです。
本当は「若干20歳でデビュー!」なんて言葉を掲げて世に出るほうが楽だったのかもしれない。けれど、「音楽って年齢ちゃうやろ」と思っていたから、僕らはそれを選ばなかった。だから、年上の先輩方と比較されることも多かったし、ジェネレーションギャップを感じることもたくさんありました。
さらに当時は、音楽業界の伝統やルールのようなものが今よりも明確に存在していました。こうやって立ち振る舞って、こうやって売って、ああしてこうして……。
それが、SNSの普及や音楽の聴き方の変化によってどんどん崩れていく状況で、僕らはもがいてきました。
SNSについては、今や音楽をやっていく上で必要不可欠な強力なツールだと感じています。「MAMORIO」を購入したのも、「また落とし物しちゃった」ってツイートした時にファンがくれたリプライがきっかけです。若いファンが多く、スピード感や情報収集力にいつも驚いています。
一方で、正直「わけわからん」と思うこともあるんです。めちゃくちゃな発言をぶつけられたこともあります。その理不尽さにキレた曲が「無理無理無理」という曲です。
ネガティブなエネルギーから音楽を作ってきたと思うし、僕らの原点であるロックンロールに対する想いは貫いてます。
いま、ようやく“文化祭を取り戻す仲間”と出会えた
活動を開始してから9年。学生時代から感じてきた葛藤や感情は抱き続けていますが、一方で年齢や音楽業界の縛りに囚われることなく、仲間と楽しめるようになったとも思います。
2019年6月に開催される「アラスカナイズロックフェス2019」は、僕らが音楽を続けてきて出会った、本当に心を許せる仲間たちとのフェスです。
それこそ、きっと僕は高校時代に落としてきたあの文化祭を取り戻せると思っています。周囲に対して抱えてきた葛藤を超えて、お祭り騒ぎを楽しめる状態になれたのかな、と。
今、人生で一番楽しくて、バンドの健康状態もとてもいいんですよ(笑)。僕自身が歌っていて元気になれるような曲も生まれていて、今までで一番ポップでハッピーなものが届けられる気がします。
心から楽しんでいる僕らに、ぜひ会いに来てください。
ライブスケジュール
『アラスカナイズカウントダウンパーティー2019』(終了しました)
4/17(水):仙台MACANA(w/ 3markets[ ] 、ココロオークション)
4/18(木):代官山UNIT(w/ 夜の本気ダンス)
5/19(日):神戸太陽と虎(ワンマンライブ)
『アラスカナイズロックフェス2019』(終了しました)
6/1(土):神戸Harbor Studio
(w/ パノラマパナマタウン、魔法少女になり隊、Bentham、Half time Old、Halo at 四畳半、ircle)
*その他ライブ情報はドラマチックアラスカHPにてご確認ください。
最新リリース
1st Full Album「最後のフロンティア」
2018年11月7日(水)発売
初回盤(CD+DVD)¥3,500+税 / 通常盤(CD)¥2,500+税
<収録曲>
01.LAST FRONTIER
02.リダイヤル(2018 ver.)
03.夢現
04.人間ロック(2018 ver.)
05.無理無理無理(2018 ver.)
06.ランニングデッド
07.和心(2018 ver.)
08.こゝろ
09.暴れだす
10.THE ONE
11.東京ワンダー(2018 ver.)
12.クソッタレセカイ
13.おつかれさま
14.25
(Photo:大口葉)